1982年、写真家としての修行を終え、フリーになってまず取り組んだ作品です。
バンコク、そしてハノイ、このふたつの都市は僕にとって何の違和感もなく、むしろ、当然そこへ行って撮らなければならない街でした。
30歳になる直前です。
後に書くことになる自伝的エッセイ「トオイと正人」にもあるように、そこから写真を始める他なかったのです。
8歳までの幼少年期を過ごしたアジアの町を、記憶をたよりに写真を撮ることで、自分を確かめてみたかったのです。
毎日毎日、何でも撮りました。
人、犬、猫、木々、雨や風、熱暑で触れ上がった大気、そして忘れていた言葉や匂いさえも写る気がしました。
瀬戸正人